2020年02月05日

魍魎の匣 京極夏彦

「姑獲鳥の夏」に引き続きの、京極作品。「魍魎の匣」、読了しました。

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魍魎の匣 (講談社文庫) [ 京極夏彦 ]
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この本も分厚い(笑)。1000ページ以上ありましたね(笑)。

ネタバレありますので、ご注意あれ。

前作の「姑獲鳥の夏」と同じような構成で、最初は蘊蓄が多いです。本の虫は前作も読了していたので、前と同じようだなぁ、と余裕を持って(笑)、読めました。

14歳の少女二人と匣(箱)に入れられた女の子。箱の中の女の子は「ほう」と笑う。
バラバラ殺人事件が起こり、14歳の少女の一人、加菜子が駅のホームから転落。
また、ある宗教団体の関係者に行方不明になった少女たちが、バラバラ殺人の被害者という事実が判明。
新進の小説家が登場。
加菜子がホームから転落後にどこかに搬送される。
で、事件が事件を引き起こします。

時代設定が前作同様、戦後まもなくから数年経ったくらいで、文体もその雰囲気で描かれています。慣れたらそんなに読みにくくはなかったです。

憑き物落としの京極堂や関口、特殊な能力の持ち主の榎木津、刑事の木場など、前作からのキャラクターも登場し、もやっとした事件の解明をしていきます。

面白く読めました。ただ、読むのがしんどい場面もありましたが。
関口先生の小説のセリフまでもが、伏線になっていて、あっ!!っと驚いたり。
今作も魍魎という妖怪が出てくる訳ではないんです。
憑き物落としなのに、ラスボスと対峙する京極堂は黒い装束でカッコ良かった。

事件解明の結末はちょっと後味が良くなかった。

ですが、エピローグな関口先生の作品が本になって。何となくめでたしめでたし、で終わりました。

いやぁ、とても達成感、読了感のある本でした。これだけ分厚いと、読んだった感でいっぱいです(笑)。

ミステリー好きには是非とも読んでもらいたい小説です。

本の虫も、もちろん別の作品も読むつもりです。

本の虫のお気に入り
P18
「・・・。生きるってことは衰えて行くってことだろ。つまり死体にチカヅクってことさ。・・・」
→言っている事は間違ってはないけど、14歳の女の子が言うことかな?

P21
畏れは諦観(あきらめ)に代わり、そして絶望が訪れる。頼子はそれが訪れる前に、満身の勇気を奮い立たせて加菜子に真意を質そうと考えた。それで壊れればそれまでだ。
→エライ、と思います。

P22
「楠本君。君は私の、そして私は君の生まれ変わりなんだ」
→どう言うこと?と、思ったけど、読み進めると謎が解けた。

P37
しかしーー憎めない犯罪者や罰することの出来ぬ悪人がいると云うことを木場は失念していた。そして実際にはそう云う奴等の方が多かった訳である。
→何となく理解出来ます。グレー、ですね。

P54
不思議なもので、相手が商売女になると、木場は途端に、まるで呪縛が解かれたように気楽に振る舞うことが出来たのだった。
→気楽な方が良い良いですからね。

P75
絶対に訪れる筈のなかった出逢いが、何の前触れもなく訪れてしまったのだ。
何故もっと緊張しない?何故もっとーー。
→女優さんと出逢うなんて、ステキだな、とおもいますが。

P90
それはーー宇良を返せば、他の文芸誌から声がかからないと云う、ただそれだけのことでもあるのだが。
→それはリスクがありますね。関口先生。

P132
「まあ異常と正常の線をどこで引くかって云う問題でしょうがねえ。・・・」
→何かを考える時にどうするか、ですね。こういうのは、何が正解だか解らないから、難しい。

P133
「いえね、動機だけなら皆持っている。計画するだけなら、誰だってする、それがあるからと云って特殊なことじゃない、犯罪者と一般人を分かつものは、それが可能な状況や環境が訪れるか否かの一点にかかっているーー・・・」
→京極堂らしいね。でも、本当にみんなそう思うのかなぁ?と疑問にも思う。

P134
最後の一線を越える引き金は、実は些細なことーー心の揺れだとか勘違いだとか激昂しているとか、そう云う普段から善くあることーーなのかもしれない。
→直接の原因は単なるきっかけか?

P137
「殺意ーーなんでしょうか。寧ろ好機(チャンス)ーーなのかな」
→殺意を持っている人にはチャンスなのだ、と思います。

P170
あんな子とをして、何になるのだろう。母親は莫迦だから、あんなものに頼るのだ。
莫迦じゃないだろうか。
→なにか怪しげな宗教にはまる人を側で見ると、こんな感じなんだろうね。

P179
だから居間でも何故殴られたのかは善く解らない。そしてそれが解らないこと自体が殴られる原因だということも福本は解ってない。
→ズレている人ってたぶんみんなこんな感じですね。

P191
こんな時の自分がどのように相手の目に映るかを、頼子は何となく知っていた。
それ程悲しくなくたって、あんまり辛くなくたって、それでも十二分に悲しく辛そうな姿にみえているのだ。
→世の14歳の女子ってみんなそうなの?もちろん全員がこうという訳ではないと思いますが。自分が14歳の頃の事は思い出せませんが、恐ろしい事です。

P195
いったい組織とは何だろう。
→これ、本の虫も日々思う事ですね。

P197
そんなに縄張りに拘泥(こだわ)るなら、もっと内部の構造を確乎(しっか)りと作るべきだ。造反者一人をきちんと処分出来ぬ癖に体面だの面子だのばかり気にして、・・・。
→どの世界でもこういう残念な組織ってありますね。

P199
「統率が執れねえのは俺がいるからじゃなくてあんたの采配が拙(まず)いからじゃねえのか。・・・」
→そうだと思います。と、熱く言ってみます(笑)。この石井という警察のエラいさんは、権威とか権力とかを嵩にきるハラの立つ奴だからね。

P236
加菜子は天に昇ったんだ。
→これでも不思議はないの・・・か?

P264
「・・・。しかしね。否定することと仕組みを知っていることは別だよ。また好き嫌いと出来る出来ないも別さ」
→その通りだと思います。が、これを理解出来ない人は多いとも思います。

P265
「この世にはね、不思議なことなど何ひとつないのだよ。・・・」
→京極堂の決めゼリフ、カッコいい!でも、今回は不思議だと思うんですけどね。

P283
「しかし裏を返せば明日のことなど判らないんだから、何を云われようと判断のしようがない。判断基準は過去か現在に置くしかないのもまた事実だ。だからね、やたらと過去現在のことを云い中(あ)てる占い師は、信用出来ない」
→なるほど。本の虫は占いとかやってもらったことないんですが、そう言われるとそうかも。

P283
「・・・。信者になってしまえばペテンも何もあったもんじゃない。その途中で壺を買わされようが、玉を買わされようが。皆有り難い宝物になってしまうんだ。況(ま)してや取っ掛かりで少少の嘘があったなんてことはどうでもいいことではないか。それ以降の幸せな一生を手に入れたのだ。信ずる者は救われるのだ」
→スゴい。京極堂はスゴ過ぎる。

P289
「・・・苦情が出るのは、やり方が下手だから、人を救うことが出来ない霊能者が増えた所為(せい)だ。・・・」
→これって、もはや霊能者、とは言えないですね(笑)。また、これは霊能者に限った事ではないと思います。

P290
「・・・。あいつは人を救うどころか混乱させる一方じゃないか。・・・」
→京極堂の榎本津の評価。当たってますね。笑えます(笑)。

P292
「・・・。しかし高い金払ってるんだからーーと云う貧乏根性が運勢を変えることだって、中にはあるんだ。偶然運が向いて来る場合だってある。・・・」
→偶然も大切。偶然も幸運。

P299
「・・・。霊能者はね、だから責任を取らないのなら未来予知はしてはならないのだ」
→ビックリ。でも納得ですね。合理的です。

P304
「・・・。それが今日まで後を引きーー遥遥日本にまで伝わって関口君、君のような無理解な人間を生んだのだ」
→(笑)。京極堂が関口を馬鹿にする言い方はいつも面白い。

P305
「・・・。オカルトの箱に入れられて迷惑をしている者もいるが、それを隠れ蓑に使っている者もまた多いからね。・・・」
→忙しい、と口癖のように言う人と同じですね。多忙は怠惰の隠れ蓑、とか言うからね。

P370
一秒たりとも無駄な時間が有ってはならない。
→劇中小説の一文。気持ち悪い小説ですが、これには共感出来ます。

P374
木場は一切弁解をせず、黙って聞いていた。木場が黙っているのを良いことに、石井は執拗に同じ話を繰り返した。
→こういう安全地帯から攻撃をする人は嫌いです。本の虫もこうならないように気をつけないとね。

P312
「・・・。それに対してが学界も、報道機関も、もちろん世論大衆もなんら疑問や違和感を持たない。これこそが大いなる無知だ。その無知は、ひょっとしたら何の罪も犯していないかもしれない人間を死に追いやってしまった。凡てはーー無知から来たるものだ」
→何が本当のことのか、常に考えないといけないですね。これは現代にも言えることですね。

P377
そして頼子はーー頼子はとても不可解な表情をしていた。それは、それまで木場が見た頼子の表情の中で一番本当の頼子の顔であるように思えた。
→ますます謎です。何を考えているのだろう?加菜子は消えてしまったし・・・。

P421
このままでいい訳がない。しかし、何をどうすればいいのかは更に判らない。整理しても整理しても混乱する。
→まず動く、が木場の場合の正解だと思います。

P432
「・・・。予断は有効だ。証拠は後からついてくる、と」
→カッコつけすぎですね(笑)。でも、賛成です。勘とか、ひらめきとかは大切にした方がきっと良いのです。

P436
考えるより歩け。視て聴いて嗅いで、体で知るのだ。
→経験を重ねてきた木場だから言える事ですね。

P443
「・・・。この閃きと云うのはね、ことアカデミズムの中心に居座るためには何より不必要なものだからね」
→変化を嫌う集団だと、こういう考えになると思います。学界以外でも。

P457
「・・・。別に空を飛べる訳でも、脱皮できる訳でもないぞ。・・・。」
→これが榎木津のお父さんの言う「偉い」。榎木津の考え方とほとんど同じですね(笑)。

P479
自分の座っている場所があれば良かった。
→でも、偉くなるとこういう事になかなか気付けなかったのかもね。

P486
「待ってくださいよ。僕は何も知らないんですよ。依頼するなら話してくれなきゃあ」
何という不本意な発言だろう。
→榎木津もこういうことを言う事もあるんですね。

P487
榎木津の認識に照す限り、警察と云うところな訳であり、だから別段驚く程のこともないと思う。
→榎木津は、組織内のそういう残念なところも見えるの?

P489
しかしそれは榎木津の会話術だの対人処方が優れている訳ではなく、彼が単純に肩書きや身分を無視した非常識な対応しか出来ない所為なのだが。
→でも、誰とでもフラットに接する事が出来るって大切だと思います。

P493
あっちも駄目だ、こっちも駄目だでは道がない。大仰な理由をつけて自ら活路を断っている。
→こういうのが一番駄目ですね。可能性のあることはやらなくっちゃ。

P499
京極堂の話だと、来てすぐに横になり熟睡して、起きるなり帰ることもあると云う。何しに来ているのか全然解らない。ただ、主がこの変人のイカレた振舞を気にしている様子は一切ない。
→榎木津も変わっていますが、京極堂も変ですね(笑)。

P511
どんな平凡な人間も、こうやって手短に半生を纏めてみると、この寺田と云う男のように何か怪しげなものになってしまうのだろうか。
→それは先入観に引っ張られているのでは?と思いますが。

P521
呆れたものである。そんな誰でも思いつくような幼稚な教義で信者は熱狂し、身上を持ち崩す程に金をだすのか。
→本当の信者なら、出すのでしょう。

P522
「・・・。只管(ひたすら)現世利益を求める愚民の前には、どのような崇高な教義理論も無力なのだ。・・・」
→だったら、本の虫も愚民かも(笑)。

P528
「・・・。僕はこの手の妖怪は苦手だよ」
→京極堂も完全無欠ではないのね。

P552
この無責任で非常識な探偵は、いとも簡単に交野市荷を下ろしてしまったのだ。つまり彼は、調査に手をつける以前に、柚木加菜子の捜索を諦めてしまったのだ。
→榎木津は自由。フリーダム(笑)。現代ならバッシングされると思うけど、賞賛もされると思います(笑)。

P555
彼はあっさり柚木加菜子捜しを諦めたらしい。それが榎木津の上機嫌の理由である。
→(笑)。でも、上機嫌でいることは大切です。

P558
ただ、本当は違うのに、周囲に対して自分を無骨に見せかけるべく行動しているらしい節はある。そうなのだとすると、彼の本意がどちら側にあるのか、阪大に困る。
→木場さん、ギャップが大きいとしんどいですよ。

P560
「たぶん親父殿は、僕に電話したことも含めて、もうこの件は忘れているだろうね」
流石に榎木津の父である。処置なし、と云ったところか。
→この榎木津の親父殿にも、いつか物語に登場してもらいたいと思います(笑)。

P563
・・・、榎木津は本当に動かなくなってしまった。
→この喫茶店で何を見たのだろう?

P579
私の現実と、彼女の現実には大きな隔たりがあるのだ。現実は人の意識の数だけある。・・・。
→だから、意識して思いを形にして、現実を作っていかないと、ですね。あと「正義」とか「理想」とかも人の数だけあるものだと思います。

P607
父親がいないと云う環境が子供の素行や性格の形成に対して全く影響しないとは云わない。しかし父親がいないと云うだけで一括されては堪らない。
→全く同感です!

P616
「加菜子は、雨宮さんが育てたようなものです。かの娘は、実の母を姉と呼び、育ててくれた人を雨宮さんと他人の呼び方で呼んだ。私は、そんな一生を生まれ乍らにしてあの娘に与えてしまった」
→親としてはツラいでしょうね。でも、やっちゃ駄目だったと思います。

P625
これからどうするのかーーそれこそが問題なのだ。
→そうだ。

P719
「・・・。動機は後から訊かれて考えるものなんだ。・・・」
→まずは行動がある、って事ですか?

P726
「加菜子は母親の身代りだったーーそう云う見方もあるだろう。
→ちょっと納得。

P730
「それは少女らしい稚拙な護身術だよ。普通ならそんな嘘は効力を持たぬが、頼子と云う娘は身の程を弁(わきま)えている。どうすれば拙い嘘が効果的に演出出来るのか、本能的に体得していたようだね」
→何と。本能なのか!恐るべし女子中学生。しかし、女子というか、女性は多かれ少なかれこういう能力があるんだろうと思います。

P731
「・・・。楠本頼子は夢見がちな娘じゃなかったんだ。最近の中学生はもっと現実的なんだよ。・・・」
→そうなのか?

P734
誰だ。魍魎は、本当はどのような姿をしている。
→それは誰にも分からないんだ。

P741
「・・・。ただ、彼の研究は最終的に軍部の需要(ニーズ)と合致しなかったんだよ」
→ニーズを知る事は大切だ。
 どんなにスゴイ研究や商品もニーズに合わなければ使えないからね。

P769
京極堂は意識的に兵衛の言葉の途中で話始めている。兵衛は常に最後まで喋れない。京極堂はあくまで低姿勢の癖に、どことなく威圧的だ。
→京極堂は相手や状況によっていろいろ変えることができる柔軟さがありますよね。
 アドリブ上手。

P794
「一箇所に集めるから大変なことになる。それぞれに戻してしまえば、それぞれには大した不幸じゃない。・・・」
→人の不幸や悩みは他の人から見たら取るに足りんものだ、という事ですか?

P840
ーーー聖域ならば、侵すまでだ。
→こういう事が出来る人ってカッコイイ。

P843
予定調和?何と云う面白味のない言葉だ。
→本当にそう思います。

P887
「今日ーーー物語に終わりを告げるために、ある陰気な男がここに来ることになっているのです」
それは私の小説の文句だ!
→榎木津おもしろい。
 榎木津も関口の小説を読んでいたってことなのかな?

P899
「・・・。何が禍いするか判りません。今後は気をつけることですね」
→うん。その通り。本の虫も「ある人」に言ってあげたい(笑)。

P904
「静かにーーー暮らしたかった。感情の起伏のない凡庸な暮らしが、同じことを繰り返す毎日が、たまらなく大切だったのです。・・・」
→分かるような気もするんですが、ちょっと違うような気もします。

P938
「満足とは如何なる時も自己満足だ。それ以外に満たされることなどない!」
→ハッとした。京極堂はやっぱりスゴイ!

P955
京極堂は、美馬坂から科学を祓い落とそうとしているのか!
→予想外の展開で驚きました。

P996
「あなたはそれ程に醜くなった絹子さんが厭だったのですか?肉体の衰えが、精神の衰えに繋がるのは当たり前のことです。それを救うのはこんな不細工な匣じゃない。あなたの忍耐や包容力や理解力だった筈だ。あなたはそう云う努力を一切せず、現実を見つめることなく学問の世界に逃避しただけだ。・・・」
→逃げること全部否定するのは違うと思いますが。けど、この美馬坂の場合はダメですね。

P1017
「・・・。これが呪いと云う、あなた方の分野では扱えない僕の唯一の武器だ」
→京極堂はやっぱりカッコイイ。理屈っぽくても見せ方で変わるんでしょうね。
 京極堂の武器は呪いなんだ、と思った。

P1038
木場はこれと云った処分を受けなかったようだ。どうやら私達が榎木津の暴走車に乗っている間に京極堂が大島警部に根回ししていたらしい。重ね重ね油断のならぬ男である。
→京極堂は全部、見えているのか?全部分かっているのか?謎だ。

P1039
「見るがいい。これが関口君の本だ」
褒めているのか、虚仮(こけ)にしているのか判らぬ。
「中中装丁が善い。売れないだろうがいい本だね。お目出度う」
→面白い。こうやっていつも関口先生はバカにされているのか。

P1047
「・・・。幸せになることは簡単なことなんだ」
→そうかもね。

P1048
それでも
私は、何だか酷くーーー
男が羨しくなってしまった。
→雨宮のことですね。雨宮は加菜子のことが本当に大切だったんですね。
 その思いはかなり歪んでいたと思いますが・・。
posted by 本の虫 at 15:25| Comment(0) | 小説 | 更新情報をチェックする
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