2019年11月25日

姑獲鳥の夏 京極夏彦

姑獲鳥の夏 京極夏彦

読了しました。
辞書のような厚さの小説。

メチャ面白かった。

心霊とかオカルトとかそういう類いのストーリーかな?と思って読み進めたんですが、ちょっと違っていました。哲学とか宗教とか宇宙物理学の話もあり、その全部が伏線になっていく。とても緻密に描かれています。

それがだんだんミステリー的な展開になっていき、静かに盛り上がっていきます。探偵が登場し、失踪事件が起こって。

この探偵(榎木津)は過去が「見える」らしい。ここはミステリーです。でも、実はちゃんと理由も解ります、後で。探偵は何も調べなくても、全部見えていました。

主人公の京極堂もまた、不思議な感じですが、この一見、謎だらけの失踪事件を鮮やかに解決します。解決っていうか、そのトリックを解き明かす、と言う意味です。

久遠寺家は悲劇の家系です。最初は不気味だった久遠寺の姉妹、姉の涼子と妹の梗子、二人とも悲劇の家系の犠牲になってしまったんですね。何だか哀れで可哀想でした。

伏線と思わなかったことが、実は伏線で、その伏線もちゃんと解決されて。スゴい作品だと思います。涼子が和服を着ていたり、関口の夢に出てきたり、榎木津がすでに結末を解っていたり。

その中で、京極堂が全部を解決するのが見事でした。京極堂は憑き物落としが出来るんですが、オカルト的に解決するのではなく、理論的に破綻せずに言い当てた時にはゾクっとしました。黒装束の京極堂はカッコよかったしね。

読み終わった後の気持ちは関口と同じ気持ちでした。

昭和的な雰囲気を出すための古臭い文体にクセがあるので、好き嫌いがあると思いますが、ミステリー好きには是非とも読んでもらいたい作家先生だと思います。

本の虫も別の作品を読んでみたいと思いました。シリーズ化されているし。

メチャ面白かったです。


本の虫のお気に入り
P15
「・・・だいたいこの世に面白くない本などはない。どんな本でも面白いのだ。・・・」
→その通りだと思います。

P23
「この世に不思議なことなど何もないのだよ、関口君」
→そうなの?って思いますが、この小説を読んだ後ならそう思えます。

P24
「だいたいこの世には、あるべくしてあるものしかないし、起こるべくして起こることしか起こらないのだ。自分達の知っている、ほんの僅かな常識だの経験だのの範疇で宇宙の凡てを解ったような勘違いをしているから、ちょっと常識に外れたことや経験したことがない事件に出くわすと、皆口を揃えてヤレ不思議だの、ソレ奇態だのと騒ぐことになる。・・・」
→京極堂はいつも冷静です。

P29
「・・・。お互い見えるものも見ずに、見えないから存在しないと思っているんだ」
→素粒子の話や哲学的な話ですね。

P54
「いや、君には君の常識があるし、主義主張もあるだろう。それが今の社会に合致したものであれば別に構わない。しかし、いつの時代でも、どんな状況でもそれが絶対であるというまでには至らないということだ」
→そうですね。

P151
「・・・。奇跡だの怪異だのというのは昨日関口君にも話した通り、偶さか現在の常識に合致してなかったり、今の科学知識が及ぶ範囲ではなかったりしているだけのことだ。そもそも起こる筈のないことは起こらない。それが僕の持論だ。・・・」
→京極堂はブレないですね。

P186
戦争は、個人の意志に関わりなく命を奪う。戦場には当然人間らしさなどはない筈だ。しかし人間らしさを動物にはない人間だけの特性と仮定すると、戦場で殺戮を繰り返す異常な行為もまた、人間らしさといわねばなるまい。そう考えると、人間らしく生きるということが、果してどういうことなのか私には解らなくなる。
→関口も狂っている、と言われていたようですが、至ってまともだと思います。

P219
「・・・。こうなると話は別だ。儂は軽い気持ちでいったのに、向こうは十年もかけてそれを実行したんだ」
そんな他愛もないことで、人間というのはそんなに懸命になれるものだろうか。
→藤牧はそれを実際にやり遂げたのだから、スゴいと思います。

P260
「いうまでもなく、密室からの人間消失は矛盾です。脱出方法を吟味する前に、本当にその矛盾が矛盾たり得るのかを検証する必要があります。・・・」
→京極堂の妹の敦子もまた、冷静だ。でも、何かを考える時にはこういう冷静さは必要だと思います。

P373
そう、戦後の日本は国中が細民窟だった。そしてどこもが裏付けのない明るさと生命力に満ちていた。
→今は生命力が落ちているのか?

P374
いずれてしても、その不可解な生命力を礎に、国は講和を果たし、国民の生活は破竹の勢いで向上している。そして、豊かさと引き換えにその生命力はどんどん薄れて行く。
→現代はさらに生命力が落ちているのかな?

P414
「呪いはあるぜ。しかも効く。呪いは祝いと同じことでもある。何の意味もない存在自体に意味を持たせ、価値を見出す言葉こそ呪術だ。プラスに作用する場合は祝うといい、マイナスに作用です場合は呪うおという。呪いは言葉だ。文化だ」
→だったら、やはりマイナスの言葉は口にしない方が良いですね。自分を呪うことになるからね。

P532
確かにあのとき澤田富子は童子の神様----とだけいったのである。オショボとはひと言もいっていない。蛙だとか堕胎だとか不気味な要素がやけに符号したために、私達が、いや、私が勝手に結びつけて考えていただけなのだ。それこそが京極堂のいう捨てるべき先入観である。
→確かに先入観は捨てるべきですね。難しいですが。

P544
「・・・。都市にそんな救済措置はありません。あるのは自由・平等・民主主義の仮面を被った陰湿な差別主義だけです。現代の都市に持ち込まれた呪いは、単に悪口雑言罵詈讒謗(ざんぼう)、誹謗中傷の類と何ら変わらぬ機能しか持たないのです。・・・」
→これって、今のネット社会となんとなく似ていますね。

P571
「書物の持つ価値は歴史的遺物としての価値や骨董品的価値だけではありません。読む者にそれを読み解く力さえあれば、仮令(たとえ)何百年経とうと昨日書かれたもののように価値を生み出すのです。この世に役に立たない本などないのです」
→この世には面白くない本も役に立たない本もない。古書店をやっている京極堂らしい意見ですね。

P612
「日常と非日常は連続している。確かに日常から非日常を覗くと恐ろしく思えるし、逆に非日常から日常を覗くと馬鹿馬鹿しく思えたりする。しかしそれは別のものではない。同じものなのだ。世界はいつも、何があろうと変わらず運行している。個人の脳が自分に都合良く日常だ、非日常だと線を引いているにすぎないのだ。いつ何が起ころうと当たり前だし、何も起きなくても当たり前だ。なるようになっているだけだ。この世に不思議なことなど何もないのだ」
→そんな気もするし、そうじゃない気もする。でも、物事に対しての自分の受け入れ方、受け止め方次第ってことですね。

P620
何だ、理由を聞けば何てことはない。不思議でも何でもないじゃないか。
→やっぱり不思議はないのか。理由が解れば。

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posted by 本の虫 at 05:39| Comment(0) | 小説 | 更新情報をチェックする
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